ボジオランゲ・シャルドネキュヴェ・テル・ガッロ 白ワイン

HWYS評価⭐️⭐️⭐️⭐︎
【名前】:日本表記
ボジオランゲ・シャルドネキュヴェ・テル・ガッロ 白ワイン
:外国語表記
BOSIO CUVÉE DEL GALLO
LANGHE DENOMINAZIONE DI ORIGINE CONTOOLLATA CHARDONNAY
酒類:白ワイン
原産国:イタリア
葡萄種:シャルドネ
生産者:ボジオ
原産地域:ピエモンテ
アルコール度数:13.5%
【飲んだ感想】
白桃の香りに包まれる、透明感あふれる白ワイン体験
【第一印象】
グラスに注いだ瞬間、まず驚かされるのはその透明感。
白く透き通った液体が光を反射し、まるで小川の水面のように澄んでいます。
香りをひと嗅ぎすると、すぐに白桃のような甘く豊かな香りがふわっと広がります。
まるで熟した桃を手に取った時のような、自然でみずみずしい甘さ。
この香りだけで、しばらくグラスを揺らしながら余韻に浸っていたくなるほどです。
「飲まなくても幸せ」——そんな香りの力があります。
【冷えた状態(約12℃)】
セラー温度12℃ほどに冷やすと、飲み口はとても軽やか。
冷えている時はコクや旨みは控えめに感じられ、スッと飲みやすいバランスに。
軟水のようなまろやかでサラリとした舌触りが印象的です。
タンニンはほとんど感じられず、果実をそのままかじったような自然な余韻が続きます。
この時点で既に「優しい白桃ジュースのようなワイン」という印象。
【温度が上がると…変化のドラマ】
時間とともに温度が少し上がってくると、このワインの真骨頂が顔を出します。
瑞々しさはそのままに、舌の上に少し重みと厚みが加わり、別世界へと誘われるような感覚に。
「ん?樽のニュアンスかな?」と感じる瞬間もあり、香りではなく味わいの中にほのかな芳しさが現れます。
樽を効かせているのかもしれません。
過去に飲んだ1本目よりも、今回の2本目の方がその旨みがより引き立ち、全体の調和を感じました。
【醸造所について】
まず先に言いたいのは、「ボジオ」は伝統と革新を両立させている実力派の生産者だということです。
次に、その理由をストーリー風にたどりながら、あなたが感じた香り・味の印象と結びつけてご紹介します。
1|ルカ・ボジオという人と家族の歴史
3代続くワイン一家:現在このワイナリーを率いているのは Luca(ルカ)・ボジオ。祖父母が1960年代にピエモンテ州ランゲ地方で始めたワイナリーから受け継ぎ、家族の遺志を現代に繋いでいます。 学びと革新:ルカはトリノ大学でワイン醸造学(醸造学=オエノロジー)を学び、ネイティブ酵母の活用、化学添加物の最小化、香りと構造(味の骨格)を守る造り方などを導入しています。 拡張と挑戦:彼のリーダーシップのもと、所有畑は1,000エーカー以上にまで拡大。バローロ地区のワイナリー買収などにも挑戦し、赤ワインでも存在感を強めています。
こうした背景が、「伝統を守りながら、香りや風味で新しい表現を追い求める」姿勢を支えています。
2|「ランゲ・シャルドネ(Langhe Chardonnay)」の造り方:あなたの印象の裏付け
あなたが感じた「白桃の香り」「温度で表情が変わる」「樽のニュアンス」などは、以下の技術的仕様と非常に整合します。
区分
ボジオの造りの特徴
どう香り・味に出るか
24時間のスキン・コンタクト(低温)
ぶどうを皮と果汁が少し触れ合う時間を持たせる
香りにより複雑さを与え、白桃や花のニュアンスが立ちやすくなる
低温発酵(10日間、ステンレスタンク)
酵母活動を穏やかにして香りを残す
フルーティな香りを保ちつつ、過剰な発酵臭を抑える
4か月間/自社酵母との熟成
醸造所で自ら育てた酵母を使い、ワインをゆっくり味わわせる
酵母由来の旨み(パン、酵母香)やまろやかさをプラス(あなたの言う“樽風味”と一部重なる)
樽熟成の記載はないが他シャルドネでの樽使用実例
他の同ワイナリー作品(Passato Chardonnayなど)では樽熟成や焼き風味の香りが報じられている
樽香やココナツ・バター風味を感じるレビューもある(こちらは上級帯)
特に「温度が上がると風味が広がる」「樽香を感じるようになる」という印象は、熟成や酵母との接触、ちょっとした樽ニュアンスの影響を受けている可能性が高いです。
例として、Luca Bosio 2021 Passato Chardonnay は Wine Enthusiast において 88 点を獲得。「ローストした果樹(orchard fruit)」の香り、白い花や甘いスパイスも感じられると評されています。 これはまさに、「香りだけで余韻を楽しむような印象」に近い表現と重なります。
3|「提供方法」で魅力を引き出すコツ
ワインは造りだけでなく、サーブされる場面でも表情が変わります。ボジオのシャルドネをより楽しむためのポイントを、あなたが感じられたことも交えて紹介します。
温度管理は冷やしすぎず:8〜12℃あたりが推奨 公式サイトでは、試飲において 8℃ 程度 をおすすめしています。 あなたの体感「セラー温度 12℃ あたり」「冷えていると淡く感じる」は、この温度帯で飲む際の典型的な挙動と言えるでしょう。 グラス選び 香りをキャッチしやすくするためには、口が少し絞られた白ワイングラス(ボルドー型ではなく、ブルゴーニュ寄りのフォルム)がおすすめです。 徐々に温度が上がる時間を楽しむ 最初は冷たく、徐々に室温に近づく中で香りの変化を楽しむ。あなたがおっしゃった「少し温度が上がると別世界へ導く」体験が生まれるタイミングです。 合わせる料理 軽めの魚・甲殻類、生ハム、前菜、サラダ、寿司・刺身などには特にマッチします。果実感と酸味のバランスが料理を引き立てます。
4|“言葉”から見るボジオの思い・哲学(インタビュー/紹介記事から抜粋)
ワイナリー自身の紹介やインタビュー記事から、彼らがどういう方向を目指しているかを垣間見ることができます。
ある紹介記事では、ルカ自身が「最小限の介入で造る」「自然酵母を使う」「香り構造を大切にする」ことを明言しています。 また、彼は「ぶどう農業への“ネイティブな知性(native intelligence)”を受け継いだ」と表現され、自然と共にぶどうを育て、ワインにその土地の声(テロワール)を反映させたいという信念を持っていることが紹介されています。 公式サイト上では、Langhe Chardonnay のテイスティング案内で、香り・果実・酸味・食事との相性について「Smooth with fruit and flower notes. Good acidity(果実と花の香り、良い酸味をもつ滑らかな味わい)」と端的に表現しています。
これらは「香りを活かす」「造りを抑制しすぎない」「ワインを生き物として感じさせたい」という方向性を示しており、あなたの感じた“香りだけで余韻に浸る”“変化を楽しむ”という体験は、この哲学と合致しています。
5|初心者にも伝えたい、ボジオの魅力を一言で言うなら
「香りと変化を丁寧に追ったワイン」
ワイン初心者の方にも、次のような視点でこのワイナリーを覚えてもらえるといいと思います。
果実香を大切にしており、開けた瞬間から白桃・花・果実の香りが明瞭に感じられる。 飲み進めるにつれて(温度上昇・グラスとの出会いで)変化する“顔”が楽しめる。 造りとしては、自然酵母・低温発酵・スキンコンタクト・熟成とのバランスを取り、香り構造と飲みやすさを両立している。 生産者としての信念もつよく、「なるべく介入を減らしてぶどうの個性を表現する」という方向性を持っている。
あなたがこれほど丁寧にそのワインを感じ取っておられるように、ボジオのシャルドネは「飲む人に香りで語りかける」タイプのワインです。初心者でも「あ、いい香りだな」「変化が面白いな」と直観的に感じることができると思います。
