フィラドーロ フィアーノ ディ アヴェッリーノ 2022年 白ワイン

HWYS評価⭐️⭐️⭐️⭐︎
【名前】:日本表記
フィラドーロ フィアーノ ディ アヴェッリーノ 2022年 白ワイン
:外国語表記
FILADORO Fiano di Avellino
酒類:白ワイン
原産国:イタリア
葡萄種:フィアーノ ディアベリーノ
生産者:フィラドーロ
原産地域:カンパーニャ
アルコール度数:13.5%
【飲んだ感想】
🍎黄金に輝く、りんごの余韻。——まるで沢のほとりに立つような白ワイン体験。
グラスを手に取った瞬間、まず驚かされるのはコルクから漂うりんごの香り。
それは青りんごでも焼きりんごでもなく、日本のりんごの缶詰のような、どこか懐かしくて優しい甘い香り。
ワインを注ぐと、最初は白く見えますが、ゆっくりとグラスに溜まるにつれ、まるで夕陽を閉じ込めたような黄金色に変化します。
光を反射して、キラキラと輝くその様は、まるで透き通った滝の水面を眺めているよう。
一口飲む前から、すでにこのワインの“勢い”を感じます。
🍏口に含むと、りんごジュースとは違うもうひとつの世界が広がる。
最初の印象は、秋田のねぶたりんごジュースのように親しみやすく、すっと喉を通る爽やかさ。
でも、その中にもう一層、香りと風味が静かに溶け合った層が隠れています。
水の玉の中に香りのヴェールがもう一枚あるような——そんな立体的な味わい。
口当たりのあと、喉と口の中間あたりでふわっと香りが漂う瞬間があり、そこがなんとも不思議。
まるで霧の中からゆっくりと狐が現れるような幻想的な感覚。
そしてなぜか、ほんのり「ロシアっぽさ」を感じるのです。寒さと静けさ、そして透明感。これは完全に感覚的な話ですが(笑)。
❄️雪解けを思わせるような、清らかでしっとりした喉越し。
冷たいというより、「ひんやり、しっとりと絡みつく」ような飲み心地。
後味に全く引っかかりがなく、するすると飲めてしまう。
時間が経つにつれて香りは落ち着き、代わりにスッキリ感が増していきます。
まるで冬の終わりに雪解けの沢を覗き込む瞬間のような清らかさ。
自然や動物、そして季節の移ろいが頭の中に浮かんでくる——そんな白ワインです。
🧀ペアリングするなら、岩塩モッツァレラやカプレーゼを。
このワインの甘さと透明感には、塩気と酸味のある料理がとてもよく合いそうです。
岩塩をふったモッツァレラチーズ、あるいは新鮮なトマトのカプレーゼ。
素材のうまみとワインの甘さが絶妙に絡み合い、一層立体的な味わいを楽しめるはず。
🍷まとめ:日常の中で“自然”を感じる、面白い白ワイン。
派手さはないけれど、確かな個性がある。
飲むたびに情景が浮かび、心がどこか遠くへ旅してしまうような、そんな体験をくれるワインです。
少し甘めで、喉越しはスッキリ。
「強さ」よりも「穏やかな勢い」を感じる、まさに自然が宿る一本。
幼い頃の記憶、ひいおばあちゃんの家で飲んだりんごジュースの味。
その懐かしさを胸に、今日もまたグラスを傾けたくなる——そんな白ワインです。

【醸造所について】
Filadoro Fiano di Avellino DOCG 2022 — 南イタリア、自然と伝統の白ワイン旅へ
南イタリア・カンパニア州、Lapioの丘に広がる小さなワイナリー、Filadoro(フィラドーロ)。その情熱とこだわりが詰まった白ワイン、Fiano di Avellino DOCG 2022(フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ)は、「土地の声」を静かに、しかし確かに語りかけてくる一本です。今回は、そのワインが生まれる背景、造り手、醸造法、こだわりを、公式・信頼できる情報から丁寧に紐解いてみましょう。
1. 醸造所・造り手 ― Lapio の風土を受け継ぐ Filadoro
ワイナリー Filadoro は、カンパニア州アヴェッリーノ県の中でも、ラピオ村(Lapio)地区に位置します。
この地は、山あいの谷に挟まれた標高約1,600フィート(約490m)程の位置にぶどう畑が広がり、山々と谷の清らかな空気・冷涼な風が育みます。
Filadoro の歴史としては、家族経営ながら比較的新しい「自社瓶詰めワイン生産」への挑戦があります。彼らは1994年にブドウ栽培・畑改善を本格化し、自らのワインをボトリングし始めたのは2008年。
現在、畑面積はおよそ5 ha、年間総生産は約40,000本(ワイン全体)という少量生産スタイル。
また、Filadoro は 有機栽培(オーガニック) を採用しており、畑の持続可能性にも配慮しています。
このように、ラピオの特別な地理・気候・家族制度という土壌が、Fiano di Avellino DOCG 2022 の原点となっています。
2. 品種・テロワール ― “フィアーノ”が語るアヴェッリーノの声
このワインの主体となるぶどうは、もちろん フィアーノ(Fiano)100%。Filadoro によれば、Fiano di Avellino DOCG のラベルは100 % Fiano という表示がなされることも。
Fiano という品種はアヴェッリーノ地域固有の白ぶどうで、厚い皮とじっくり熟す性質を持ち、かつてローマ時代から栽培されてきたという歴史も。
ワイン産地 “Fiano di Avellino” は、DOCG の認定を受ける高品質白ワイン地域で、栽培可能な区画は標高 300〜600 m、北側にパルテンティーノ山地、東側にテルミニオ‐トゥオーロ山地の影響を受ける丘陵地帯。
Filadoro の畑も、この高地、山の谷間の冷涼な風と昼夜大きな温度差、そして火山性・石灰岩質を含む土壌の恩恵を受けており、結果としてボディある白ワインを育みます。
3. 醸造方法・こだわり ― 自然を尊重し、味わいを引き出す技
Filadoro の醸造アプローチには、数々の特徴があります。まず畑での 手摘み収穫 を徹底。
また、彼ら自身の記録によると、ぶどうの栽培はオーガニック、またワイン造りにおいても畑の“個性”が活きるよう、ステンレススチールタンクで温度管理醗酵、その後「澱(おり)上での熟成」も実施しています。具体的には、フィアーノおよびファランギーナ(白品種)の場合、3か月のステンレス醗酵(12 ℃近くで)+さらに2か月の澱上熟成(fine lees)という構成。
こうした工程により、フレッシュさを保ちつつ、厚み・旨み・ミネラル感をワインに与えています。
加えて、地域の伝統品種を尊重しつつ、過剰な木樽熟成・バリック香を控える手法を取り、テロワール(地土・気候・人)とぶどうそのものが語るワイン造りを目指している点が大変魅力的です。
4. 2022年ヴィンテージについて&飲みどころ
2022年ヴィンテージの「Filadoro Fiano di Avellino DOCG 2022」は、Fiano の個性をまっすぐに表現しながら、Filadoro の“質を重視した少量生産”という姿勢が随所に感じられる仕上がりです。たとえば Wine Enthusiast による2021年ヴィンテージレビューでは、「梨が鼻に立ち、熟したメロン・オレンジが続き、そしてアーモンド・ヘーゼルナッツ・チーズの要素がバランスを保っている」と高評価されています。
つまり、2022年も期待を裏切らない「果実味+旨味+ミネラル」が備わっており、かつ比較的早飲みできる白ワインとしても魅力的です。
飲みどころとしては、今〜数年以内がフレッシュな果実味と香りを楽しむならベスト。もう少し寝かせると、より熟成したナッツ・ハチミツ・ミネラルの風味が顔を出す可能性もあります。
5. ペアリング&楽しみ方のヒント
このワインのスタイルを活かすなら、以下のような楽しみ方がおすすめです:
軽め〜中程度の白身魚、帆立、海鮮カルパッチョとのマッチング。Fiano の透明感とミネラル感が魚介の旨味を引き立てます。 モッツァレラ+トマト+バジル(カプレーゼ)や、岩塩を少し振ったフレッシュチーズとも、ぶどう本来の果実味と調和します。 前菜的な軽い料理や、春の山菜・筍・アスパラガスなど、季節の野菜との組み合わせも面白いでしょう。 また、6〜8 ℃程度に冷やしてグラスへ注ぐと、香りが立ち、ミネラル感・透明感が明瞭になります。温度が高すぎると果実味が過剰になってバランスが崩れる可能性あり。
6. 最後に — 南イタリアの地味ながら強烈な魅力を
「南イタリアの白ワイン」というと、派手な果実味や豊かな香りに頼るものも少なくありませんが、Filadoro の Fiano di Avellino DOCG 2022 は、むしろ地味ながら芯がある・土地が語るタイプのワインです。
畑の空気、標高の冷涼感、厚い土壌とそこから育まれたぶどう。それを手摘み・オーガニック栽培・丁寧な醗酵・澱上熟成という手仕事でつなぎ、最終的にグラスに注がれるその一杯には、ラピオの谷と山々の声が確かに含まれています。
ワインを開け、グラスを傾け、一口含んだ瞬間、遠く南の土地を旅しているような気分にさせてくれる「物語性」のある一本。ぜひ、ゆったりとした時間の中で、その世界に浸ってみてください。